2023年11月12日(日) 第二主日礼拝
宣教者 岡村直子牧師
マルコによる福音書 10章17~22節
【今日のメッセージ】
「あなたに欠けているもの」という言葉は人をドキッとさせる言葉ですね。私がみなさんにこの言葉を言うなら、あんたに言われたくないわ、と思ってしまう類いの言葉でしょう。これはイエスの言葉で、ある真面目に求道する心を持った人に対して言われた言葉です。このイエスの言葉は、時空を越えて今の私たちにも届く言葉ではないでしょうか? イエスのもとにひざまづいた人が尋ねた内容は「永遠の命を受け継ぐには、何をすればよいでしょうか。」というものでした。この人が永遠の命をどのように理解していたのかを知りたいですが、それは書かれていません。この人は今で言えば、いわゆる“how to/ハウツー”式の質問をしたのです。イエスとの対話の中で、この人が真面目に律法を守って生きてきたし、そのことに自信を持っていたことも明らかになります。
この人は、自分に必要なことで、自分にまだ欠けているものは何だろう、と、イエスが言われたことは何でもしようと身構えていたことでしょう。しかしイエスがはじめに言われたのは、ユダヤ人としては当たり前のわかりきった基本の律法で、この人はがっかりしながら、そんな当たり前のことはこどものときから行ってきました、と豪語しました。イエスはこの人を慈しんで次に言われたのです。「あなたに欠けているものが一つある。」この人は息を飲んで次の言葉を待ったことでしょう。思いもかけない言葉でした。「行って持っている物を売り払い、貧しい人々に施しなさい。そうすれば、天に富を積むことになる。それから、わたしに従いなさい。」とイエスは言われました。
この人は、それを聞いて悲しみながら立ち去ったのでした。この人は自分ではできないことがある、と分かったのです。ああ、そこから始まるのに、と知っている私たちです。イエス・キリストの死と復活を知る私たちは神の恵みがどれほど大きなものであるかを、頭だけでなく、心も体も経験していく人生を歩んでいます。恵みが大きいからこそ、神と他者を慈しむ小さなことを大切にしていく私たちです。
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【宣教箇所】
10:17 イエスが旅に出ようとされると、ある人が走り寄って、ひざまずいて尋ねた。「善い先生、永遠の命を受け継ぐには、何をすればよいでしょうか。」
10:18 イエスは言われた。「なぜ、わたしを『善い』と言うのか。神おひとりのほかに、善い者はだれもいない。
10:19 『殺すな、姦淫するな、盗むな、偽証するな、奪い取るな、父母を敬え』という掟をあなたは知っているはずだ。」
10:20 すると彼は、「先生、そういうことはみな、子供の時から守ってきました」と言った。
10:21 イエスは彼を見つめ、慈しんで言われた。「あなたに欠けているものが一つある。行って持っている物を売り払い、貧しい人々に施しなさい。そうすれば、天に富を積むことになる。それから、わたしに従いなさい。」
10:22 その人はこの言葉に気を落とし、悲しみながら立ち去った。たくさんの財産を持っていたからである。