2020年5月24日(日) 第四主日
準備者 山本弘夫伝道主事
使徒言行録 8章1節後半~8節
ハレルヤ、主の御名を賛美いたします。
「聖書教育」の本日の箇所から聖書に聴きます。
ペンテコステの聖霊降臨以来、十二使徒を中心とする弟子たちは聖霊による大きな力を受けて、目覚ましい伝道の働きをいたします。
そして全ての物を共有するという初期の教会の信仰共同体が生まれます。
一方で、そうしたキリスト教会の成長を恐れ、祭司、長老、律法学者などの宗教的旧勢力からの反発は高まります。
初期の教会は更に成長して行きます。
信じた人々の群れは心も思いも一つにし、持ち物を共有にし、信者の中には、一人も貧しい人がいなかったと書かれています。
5章12節には「使徒たちの手によって、多くのしるしと不思議な業とが民衆の間で行われた。」、「13民衆は彼らを賞賛していた。」、「16また、エルサレム付近の町からも、群衆が病人や汚れた霊に悩まされている人々を連れて集まってきたが、一人残らずいやしてもらった。」と書かれています。
また、大祭司とサドカイ派の人々によって使徒たちが牢に入れられると、夜中に天使たちによって解放され、「神殿の境内でこの命の言葉を残らず民衆に告げよ」と命じられます。
再度捕らえられようとするとき、民衆から尊敬されている律法の教師ガマリエルが「5:38,39あの計画や行動が人間から出たものなら、自滅するだろうし、神から出たものであれば、彼らを滅ぼすことはできない。」と語る言葉によって鞭で打たれはしますが解放されます。
その頃弟子の数がさらに増えてギリシャ語を話すユダヤ人(ヘレニストと呼ばれます)からヘブル語を話すユダヤ人(ヘブライストと呼ばれます)に対し、仲間のやもめたちが日々の配分のことで軽んじられていると苦情がでます。ヘレニストは、ユダヤ以外の地で生まれ育ちエルサレムにやって来た人達と考えられます。当時の世界共通語といえるギリシャ語を話し国際人的な面をもっていました。
そこで十二弟子は、全ての弟子たちを集め、配分の仕事のために霊と知恵に満ちた評判の良い人7人を選ばさせます。
そのときに選ばれた7人のうち二人がステファノとフィリポです。二人ともギリシャ語を話すヘレニストです。
知恵と霊に満ちたステファノとの議論に負けたユダヤ人の一部の者たちが、人々を扇動してステファノを最高法院に引いていって訴えます。
ここでステファノはアブラハム、ヨセフ、モーセからイエスに至る救済史を語るようにして神のご計画による救いを語りユダヤ人を批判する見事な弁明を行います。
そして、「7:51あなたがたは、いつも聖霊に逆らっています。」、「7:52あなたがたがその方を裏切る者、殺す者となった。」と語ると人々は激しく怒り、ステファノに石を投げ殺してしまいます。ステファノは「7:59主イエスよ、わたしの霊をお受けください。」、「7:60主よ、この罪を彼らに負わせないでください」と叫び眠りにつきます。
ここから本日の聖書箇所に入ります。
8章1節後段からは、「1後段その日、エルサレムの教会に対して大迫害が起こり、使徒たちの他は皆、ユダヤとサマリヤの地方に散って行った。2しかし、信仰深い人々がステファノを葬り、彼のことを思って大変悲しんだ。3一方、サウロは家から家へと押し入って教会を荒らし、男女を問わず引き出して牢に送っていた。」です。
ステファノの弁明に対して怒ったユダヤの人々はステファノを石で打ち殺します。そしてこのことをきっかけにエルサレムのキリスト教会に対し大迫害が起こります。
十二使徒は、エルサレムにとどまります。それ以外の信徒はユダヤとサマリヤ地方に散って行きます。ステファノの殉教を目撃したパウロはこの段階ではまだ教会を迫害しております。しかしステファノの殉教の光景はこころに忘れがたく残ります。
4節からは、「さて散って行った人々は、福音を告げ知らせながら巡り歩いた。5フィリポはサマリヤの町に下って、人々にキリストを宣べ伝えた。6群衆は、フィリポの行うしるしを見聞きしていたので、こぞってその話に聞き入った。7実際、汚れた霊に取りつかれた多くの人たちからは、その霊が大声で叫びながら出て行き、多くの中風患者や足の不自由な人もいやしてもらった。8町の人々は大変喜んだ。」です。
ユダヤに散った信徒たちは同じ宗教的基盤に立つ国の中のことですが、サマリヤは違います。もとは北のイスラエル王国の地ですが、アッシリヤに滅ぼされ、異邦の民が送り込まれ混血が進みます。南のユダヤ人から見るとサマリヤは宗教的な純粋性、正統性を失ったものとみなすことになります。ユダヤは宗教的に自己の優越を誇りサマリヤへの蔑視の感情を持ちます。そのため両者の関係は悪くなっておりました。
フィリポは、そのような地へと散らされました。フィリポはサマリヤで人々にキリストを宣べ伝えます。サマリヤの人々はピリポの行うしるしを見聞きし、その話に聞き入ります。フィリポはサマリヤで力ある業を行います。
汚れた霊にとりつかれた多くの人をその汚れから解放します。多くの中風患者や足の不自由な人をいやします。町の人々は、フィリポのこのような働きを大変喜びます。
フィリポのサマリヤへの伝道は大変義深いものです。キリスト教が、ユダヤ教の枠から脱皮して世界宗教となる大きな一歩となりました。
イエスが昇天の前に「あなたがたの上に聖霊が降ると、あなたがたは力を受ける。そしてエルサレムばかりでなく、ユダヤとサマリヤの全土で、また、地の果てに至るまで、わたしの証人となる。」と語ったそのサマリヤです。
フィリポは伝道の計画とビジョンをもってサマリヤに出かけたのではないと思います。神様に押し出されるようにしてサマリヤに向かいそこで大いに用いられ力ある業を行い、大きな実りをもたらします。
キリスト教が世界宗教となる大切な一歩が自己の計画や意思によるのではなく散らされたピリポの働きから始まりました。
神様のご計画は、私たちの思うところをはるかに超えております。今も生きて働いておられる神様の働きに信頼し従って行きたいと思います。 祈り・・・